FC2ブログ

リンダリンダのブルース

かさかさ。
ビニールが擦れる音。



僕の足元には、たくさんのゴミの入った、足利市指定のピンク色のゴミ袋。
その中のゴミが崩れた音だろう。



かさかさ。
ビニールが擦れる音。

聞こえてくる。


きっと、ピンク色のゴミ袋の中で、ゴミの雪崩が発生しているのだ。
そう。
その音さ。



かさかさ。
ビニールが擦れる音。

かさかさ。
ビニールが擦れる音。



止まぬ。
なかなか止まぬ、かさかさ音。

ピンク色のゴミ袋の中で、少し、大規模の雪崩が起こったのだろう。
だから、なかなかゴミの状態がおちつかなくて、音が止まぬのさ。

大丈夫。
そろそろ落ち着くだろう。
うん。



かさかさ。
ビニールが擦れる音。

かさかさ。
ビニールが擦れる音。

かさかさ。
ビニールが擦れる音。



本当は、はじめから、うすうす気がついている。
うまく説明できぬが、
ピンク色のゴミ袋の中で発生したゴミ雪崩の音と、
今、発生している音は種類が違う。


ゴミの雪崩は「無機」的な物質が、
重力にひっぱられるコトによって落下するトキに
まわりの他の「無機」的な物質に接触するときに起こる音だ。

だからそれは、なんらかのルールをもった連続的な音であり、
そのルールは、たぶん、くつがえされない。

だが、今、僕の耳に聞こえてくる音は
あきらかに、そのルールを破っている。


だってだ。
そのカサカサ音は、
小さくなったり、大きくなったりするし、
止まったり、鳴ったりするし、
何かの一定の法則なんてまったく守らないで、自由で、むしろ「意思」さえも感じる。



そう。
「無機」的なモノに「意思」はない。


あたかも、何かの生命体が、「意思」のモト、そこで活動をしてるような音。




難しい分析なんてしてみたが、
この音の正体は、
こんな分析なんていらなくて、
もっと簡単に、発生した直後がら判っている。


かさかさ。


僕が分析している今もなお、続いているコノ音。


かさかさ。


なぜ、初めから音の正体がわかっていたかというと、
この音、聞くのはハジメテではない。
だから、初めに聞いたトキから、
気が付いていたのだ。


かさかさ。


アイツがいる。





ピンク色のゴミ袋を、ちかくにあった長い棒でツッツクと、
しばらくは静かになり、
少したつと、音は始まる。



かさかさ。
かさかさ。



僕の威嚇(いかく)に反応し活動をやめ、
タイミングをみて、活動を再開したのだ。



もちろん、「無機」的なモノではなく、生命体であるのは確定だし、
威嚇(いかく)に反応し、タイミングを見る知能もあるコトを考えると、
虫の類でもない。



まちがいない。
正体はアイツだ。



だがしかし。
正体がわかったコトは、この件の解決ではないし、
それは重要なコトではない。

今の一番の問題は、
これから僕はどうすればよいのか?
というコト。

事態は非常だ。



捕獲?

無理。
こわいから無理。

どうする?

以前の経験はといえば、簡単に言えば、放置だ。
なすすべなく、ただ、ぼうぜんとする僕の大量の時間を奪い、
アイツは、どこかに消えていったのだ。
いろんな意味で敗北。

今回もこのタイプの対処か?

しかしだ。
よく思い出す。
あの時、アイツは僕に近づいてくるコトも、危害を加えるコトもなかったじゃないか。

知恵があるから、彼はウカツな行動をとらない。

認めよう。
アイツなんて呼ばないで「彼」と呼ぶ。
存在を認める。

お互いに存在を認め、お互いの距離を保とう。
僕は彼を捕まえない(捕まえられない)
彼は僕のテリトリーを侵害しない。

僕はこのまま仕事をつづけられるし、
彼はピンク色のゴミ袋の中で、何かの採取を続ける。

互いに何も奪われないし、利益もある。

バランスだ。
僕と彼とは、このバランスなのだ。

これならば、敗北にもならない。
調和だ。

彼もそれを望んでいるのだろう。


成立。


さっきまで戦場であったこの地は
その瞬間から、
お互が作業する共有の地となる。


かさかさ。


恐怖とも思えたその音は、実はただの作業で発生する音だから、
僕がパソコンのキーボードを叩く音と、何も違いはない。


数分もすると、いつのまにか、音は気にならなくなり、
意識はパソコンの画面の中に潜り込む。




数分後。


かさかさ。


パソコンに完全に集中していた僕は、
それゆえに、
無意識に音につられ、
無意識に音の方を見る。





ネズミと目があう。




固。




心臓が止まれば僕は死ぬだろうから、
今、僕は生きているから、そんなコトはなかったのだろうけど、
それでも、たぶん、そのトキ、僕の心臓は一度とまったのだ。



ああああああああああああ。

恐怖の夢を見たトキ、大声で叫んでいるのに、
まったく声がでないコトがある。

夢でなくとも、その現象は起こるらしい。



調和はどうした?
バランスの話は?

そんなコト、はじめからあるわけない。
ただ、僕の中の恐怖があまりにも大きすぎて、
無理やりそう決めて、
僕がそこに逃げ込んでいただけだ。


偽りの平和を信じこんでいた僕は、
目の前の現実、
彼と目があってしまったコトで、
僕の中のナニカの許容を超え、
それは極限であり、
その極限から逃げ出そうと、僕の自己防衛機能は働き、
それは、僕のナニカを奪う。


ナニカが奪われた僕がどうなったかというと、
パニックで、何も考えられない脳とは別の脳、たぶん真っ白な脳が
僕のカラダを支配し、オートマチックに動きたす。


「ツカマエロ」


白い脳から、そんな指令が響く。
ピンクのゴミ袋よりも大きな透明のビニール袋を手にとる。
1メートル先にあるピンクのビニール袋までいっきに移動。
移動完了と同時に、ピンクのゴミ袋に透明の大きなビニール袋をかぶせ、
ピンク色のゴミ袋を透明の大きなビニール袋で覆う。
透明の大きなビニール袋をしばる。
それをもち、店の外まで走る。
店の外に置く。



瞬く間。

恐怖も躊躇もまったく無く、
まるで、他人の行動を見ている感覚。



一歩ひいてピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋を凝視。

完全に沈黙。

数分。

かさかさ。



透明の大きなビニール袋の中の
ピンク色のゴミ袋から出てきた

彼と目があう。




フタタビ目があったコトで、
まるで催眠術を解かれたように、
白い脳は消え、僕の脳に、すべての権利が戻る。

停止する僕のオートマチック。



あああああああああっ!!!

この日、2回目に心臓が止まったのは、このトキだ。




捕獲?




目の前の現実。

ピンクの中から出てきた小さなネズミ。
透明のゴミ袋だから、丸見えのちいさなネズミ。
小さいから、小刻みに動くネズミ。
ネズミだけに、ネズミ色。
大きさは10センチないだろう小さなネズミ。
シッポから足から、目から、口から、
それらのスベテは、間違いなく、ネズミ。
人生ではじめて、はっきり見る、ネズミ。
しっぽは、こんなにも、しゅっとしているというコトも知る。

どういう角度から見ても、完全にネズミだ。


そのネズミをピンク色のゴミ袋ごと捕獲。
それが、目の前の現実。



さて。

生まれて初めてみるネズミの姿は、そんなにも僕に感動はあたえず、
重要ではなく、
やはり、重要なコトは、事態は非常のままだというコトだ。



どうする?
どうする?
どういうことだ?



考えが頭をめぐる。


このまま放置すれば、おそらくピンク色のゴミ袋を破り、
アイツは逃げるだろう。

だがしかしだ。



イエローに戻って行くだろうから、
また、この事態を招くコトになるだろう。



離れた場所に放すしかないというコトか?



イエローに戻ってこれぬ距離が必要。

ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋をかかえ、
放す場所を求め歩く。



適当な距離に到着。



まて。
ここで放したら、どうなる?

おそらく、近くの家へ忍びこむだろう。
そしたら、どうなる?

僕のように臆病者ばかりの世の中ではない。
彼を見つけたら、迷わず処分される可能性もある。



自分以外の生物がニガテな僕であるが、
あんなにも、しっかりとネズミの姿を見てしまったから、
コイツが処分されるコトの想像もしたくはない。



まわりに家がない場所でないとダメだ。




イエローに戻り、
ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋を車に乗せ
イエローから数分の河川敷の駐車場に向かう。

その駐車場のまわりは草木が生える茂みがあるし、
なにしろ川がある。
そこならば、どうにか生きていけるだろう。



車をはしらせ、
駐車場のある土手の下におりる道の入り口の前に到着するが、
しかたなく、車をとめる。


通行止め。



そう。
今日は台風。
数十年ぶりの規模とか、誰かが言っていたのを思い出す。
この川の駐車場は、台風などの増水時には、冠水するから、
通行止めになる。



車を無理やり道の脇の土手に止め、
傘をとりだし、台風の雨の中、
ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋を抱え、
歩いて川原の土手を降り、駐車場へと向かう。



駐車場を横切り、川に一番ちかい場所まで移動。
台風はまだ直撃ではないと思うが、確かに増水している。



恐る恐る、透明の大きなゴミ袋を開放し、
一歩ひいて、監視。


沈黙。

沈黙。

沈黙。


おかしい。
さっきまで、活動していたのに、
まったく気配がない。


ゴミ袋は破れていなかったし、
ずっと監視しながらここまで来たから、
逃げた可能性は低い。


ポツポツポツ
ポツポツポツ


もしかして!

このポツポツポツという、
雨がゴミ袋にあたる音に驚いて、
出てこないのかもしれない。



しかたない。

台風の雨の中、僕は自分には傘をささずに、
ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋に傘をさし、
雨から守る。


夕方。
帰宅のピークの時間。
駐車場が良く見える、土手の上の河川敷沿いの道は交通量が多。

誰かに見られていたらハズカシイ、
そんな感情は、初めからあきらめている。



カサ。

カサ。



よかった、居る。

やはり、ポツポツの音に、驚いていたようだ。


彼は、活動を再開させたが、なかなか外に出ようとしない。
外にでれる環境に来たコトを気が付いていないのだろう。



しかたない。

台風の雨の中、僕は自分には傘をささずに、
ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋に傘をさしながら、
彼が逃げやすいように、
ゴミ袋の中のゴミを
そっと、丁寧に、袋の外へ取り出すコトを始める。


袋の中のゴミを3分の1くらい取り出したコロ。


一瞬だ。


まえぶれが、
あったのかなかったのかも
わからないが、




とにかく、
一瞬で、
こっちを振り向くもなく、
一直線に、

彼は茂みへと消える。



突然すぎるコトに、
僕の感情はついてこれずに、

なぜ、彼は、
草や木が生えている茂みの方角がわかったのだろうか。

そんな疑問だけが頭をめぐる。

そんなコトを考えながら、
台風の雨の中、
今度は自分に傘をさし、
あたりに散らばったゴミを拾い、
ピンク色のゴミ袋が入った透明の大きなゴミ袋の中にいれ、
土手の上の車をめざす。


歩きながら、
自分の行動の理由を考てみる。

たぶん、自分の為なのだろう。
きっと、
いろんな嫌な思いをしたくなかったから、
こんなコトになったのだろう。



ふと、
思ったよりも、歩くと遠い土手の上の車を見ると、

ブルースがコッチを見ていた。



どうせ笑ってるんだろ?

「オマエは偽善者にもなれないんだな」

そう言いたいのだろう?

ああ、そうさ。

どうせ、臆病なだけさ。


台風の雨の中、
今日もブルースは僕をあざ笑う。



ああ。
なぜ、彼は、
草や木が生えている茂みの方角がわかったのだろうか。

解く気もない謎だけがが残った。




と、
台風の日の思い出を書いていたら、
足元を通りすぎる黒い影。

まじか。
人生ってなんだろ。



よこち

関連記事
スポンサーサイト



| TOP |

プロフィール

イエローMC

Author:イエローMC
イエロー ・ イエローモーターサイクル の 日記 です。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

カウンター